「売り方」が変わり続けている。コロナ禍で非接触販売の方法がどんどん進化しているのだ。今は複数の販売方法があり、顧客だけでなく売主側も戦略的に選べるようになってきた。あなたはいくつの方法を言えるだろうか? もし、店頭販売とオンライン販売しか思いつかないのであれば、今すぐ情報をアップデートする必要がある。
まず店舗による接客販売から、1995年のウインドウズ95の発売を境にして、国内のインターネットによる通販は大きく成長し、今や購入手段として完全に定着した。その結果、参入者にとってEコマース市場は熾烈な競争が繰り広げられ、魅力的だが厳しい市場になっている。しかも、ほとんどの商品やサービスは、あふれかえる情報の中で埋もれてしまい、深海魚のように浮上してくることがない。
そんな中で新しい「売り方」として注目を浴びているのが「ライブ配信」だ。中国ではライブ配信を通じて商品を紹介し、テレビショッピングのようにバンバン販売していく方法がメインだが、日本ではまだそこまで浸透していない。しかし、顧客に長時間の買い物を楽しんでもらえない中、新しく非接触での販売方法を模索しようとライブ配信に活路を見出したことで、思わぬ効果や売上を生んでいる人たちが、実は国内でも続々出てきている。特に日本の市場と相性が良い方法は、コミュニティを作って販売していくライブ配信の形である。
あまり知られていないがCyberZとデジタルインファクトの共同調査によると、2020年のデジタルライブエンターテイメントの国内市場は140億円で、2021年は2.2倍の314億円となり、3年後の2024年には、なんと1,000億円になるとも言われている。ここには、音楽や演劇のほかに集客や販売のための配信も含まれている。5Gの登場と共に、ライブ配信は今後はVRやMRなどとも相まってさらなる成長市場になることが見込まれている。さらに、ライブ配信は情報を伝える広報ツールとしても利用できるだけでなく、街づくりや地方創生にも活用されるようになるだろう。また、就職や雇用でも応用できる。
そのため、昔「店舗で直接見たりせずに、ネットだけで信用して買う人はいない」などと言って、インターネット販売に乗り遅れた人は、今度こそ、今すぐトライすることを検討すべきだ。なぜなら、今の「ライブ配信」は当時のネット販売と違い、コストがほぼ無料であり、スマホ一台あればできてしまうほど簡単で、さらに編集技術もいらないからだ。
当たり前だが、セールスをするためには、まずは存在を知ってもらう必要がある。観光客などがたくさん京都を訪れてくれていた時は、目の前に来てくれるお客様候補にどう訴求するかを考えれば良かった部分もある。だが、次々と変異株も出てコロナが長引く今、新しい販売方法、広報方法を考えることは、非常に重要だと言える。
実は、中小企業のような小規模事業者や個人事業者とライブ配信は、非常に相性が良い。なぜならライブ配信は、規模は小さくても自分なりの「こだわり」や「哲学」などを持つ人にとって、大きなプラスとして働くからである。しゃべりが上手であるかどうかよりも、その人の「世界観」や「ストーリー」の方が大事であり、それこそが波及するための鍵となる。
ここまで読んで勘の良い人は気が付いたかもしれない。実はライブ配信は「新しいことをやれ」とか「業態変更をしろ」という話ではなく、「売り方」を変えるという話なのだ。そしてこの「売り方」はこれまでのどの方法もよりも、強力に視聴者と心を通わせていける。これまでパンフレットやウェブサイトが担ってきたものが、「ライブ配信」という生の言葉と映像を通じて伝えることで、人がつながり、コミュニティが生まれ、単なる顧客やファンを通り越して、仲間化していく。そして、そこで様々なモノが売れたり、新しいサービスが生まれたり、町おこしが起こる。この分野も市場の成長に沿って、やがて激しい競争にさらされていくだろうが、今はブルーオーシャンだ。だから、今すぐトライすべきなのである。
京都は「こだわり」も「哲学」も「世界観」もある街だ。だからこそ、「ライブ配信」はものすごく相性が良い。京都が再ブレイクする方法。それが「ライブ配信」という最新テクノロジーを活用した「生身」の人、モノ、コトの魅力を伝える最強のツールを使うことなのである。
文:赤城 賀奈子(あかぎ かなこ)
イラスト:たつみ まさる